社会のために残したい

2024/09/14
社会のために残したい

近年、社会貢献に対する意識の高まりから、遺産を「社会の役にたてたい」と考えられる方が増えてきました。また、いわゆる「おひとり様」も遺産を国のものにするより「どこかに寄付したい」というような遺言を残す方も多くなっています。
これを『遺贈寄付』といいます。

寄付先として多いのは、国や地方公共団体・特定の公益法人・認定 NPO 法人等です。相続税の納税義務者は個人であるため、上記のような法人に遺贈寄付をしても、原則としてその法人に相続税は課税されません(ちょっと例外はあります)。
そのため、法人への遺贈寄付は相続税の課税対象財産を減らすことになり、相続税の節税にも繋がります。また、相続開始後に相続人が「準確定申告」を行う際、遺贈した金額を寄付金控除の対象にすることができるので、相続人の所得税の節税にもなります。
ただし、寄付先である法人は無償で資産を譲り受けることになるため、その資産の価額を収益の額として法人税が課税されます。例外として、公共法人や公益法人等は法人税の課税が生じないので、公益法人等は、相続税・法人税どちらの負担もなしに遺贈寄付が可能です。
他にも細かな注意点はありますが、ここでは「不動産の遺贈寄付」に着目です。

不動産の遺贈寄付の場合は、寄付先に必ず登録免許税の負担が生じます。
また、特定遺贈の場合には不動産取得税の負担も発生します。
上記のような税金負担の問題や、現金化しづらい、活用が難しい、維持するにも費用がかかる等の点から、不動産の遺贈寄付を受け付けていないところも多いのが現状です。
そこで、不動産そのものの寄付は避け、自己の相続開始後に不動産を売却して税金や諸々 の経費を差し引いた残額を寄付する旨を遺言で指定しておくことも考えられます(清算型遺贈といいます)。
この場合は、一旦相続人が登記をしたうえで売却活動を行わなければならないので、相続人が遺贈寄付を快く思っていない場合は、スムーズに事が運ばない可能性があります。その対策として、遺言執行者がいれば、相続人に代わって登記手続きをしたり、遺言執行者名義で売買契約を行うことができますが、「ここまでしなくても」と言いたい方も多くいるので、不動産の寄付遺贈にはまだまだ高いハードルが感じられます。

不動産の遺贈寄付に関しては様々な問題が生じやすいため、生前に寄付先との十分な協議が必須となりますが、少子化が進む今、大切な不動産を次世代へバトンタッチする新たな試みとして、選択肢の一つに考えてみてはいかがでしょうか。